きみの瞳の中には星がきらめく
「うわぁ」
横から聞こえた小さな声に顔を向ければ、運動部とは思えない白い顔が薄暗い帰り道で上を見上げていた。
(白くて当たり前か。バスケは室内競技だし、そもそもコイツはマネジだし)
自分も世間一般からすれば白い方だという自覚はあるが、それでも隣を歩くの白さには驚く。
(「私、焼けにくいんです」なんて言ってたっけか。外周ん時も買い出しも、特になんか日焼け対策してる風には見えなかったけど……陰の努力ってヤツか? くだらねぇ)
へにゃり、と眉を下げて困ったように笑っていた顔を思い出した。けど、その裏に隠れているかもしれない「女子力」というものを想像したら、その笑った顔すら作り物のような気がして気持ち悪くなった。
(ったく、アイドルはそれが仕事だからいいけどよ。オマエはただのマネジだろ? 普通の女子高生だろうが! ならそれらしく、普通にしてればいいんだよ!!)
決して口にはしない、するつもりもない言葉と感情が胸の中で暴れる。
そんなオレの横で、は相変わらず上を見上げてフラフラ歩いているから、
「ゴラッ、フラフラ歩いてんじゃねぇ。轢くぞ、」
揺れる頭を下後方から叩こうとしていた手が、止まる。止められる。
「先輩! ほら、星!! すっごい星!!」
手ではなく、中途半端に伸ばしたオレのジャージの袖を掴んで、がオレを見る。
オレより頭1個、それより下の位置から。空を見上げる様に、オレを見る。
「……宮地先輩?」
純粋な目。キラキラ、星の光が映り込んだようなこの目が、作り物だとしたら。
(女って、やっぱ怖え)
それでも、痛いくらいに心臓がうるさい。
色々気にするのは、(多分)好きだから。 | 14.10.26
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意地悪な天使もいる
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乙女チック全開
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みんなのヒーローを独り占め!
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甘美なる獲物
狙われたのはどちらだったのか。
気が付いた時には、背中は硬い床に押し付けられて、見えるはずの天井を隠すように鋭い目が見下ろしていた。
(どうしてこうなった?)
珍しく勉強をしようと言い出したのは、さすがにこのままではマズいと思えるくらいの点数のテストがいくつも返されたからで。
一人で勉強をしたところでこの点数なのだから、一緒に勉強してくれる相手を探していたところに『ヤツ』は現れた。
「一緒に勉強? まあ、いいけど」
学校内で教科書を広げようものなら、騒がれることは目に見えていたから場所を変えた。
(ああ、『家で勉強』ってのが間違っていたのか)
家へ向かう道中、冷蔵庫の中に好きなドリンクがなかった事を思い出して、コンビニに寄った。
二人で一つのカゴに、ドリンクと菓子を入れていく。チョコレートは満場一致で、甘さ控えめのビターチョコ。
「あまい」
濡れた何かが唇に触れて、自分が考えに耽っていたことに気が付いた。
自分の家にがいる事が、なんだか変な感じがして。それで教科書を広げて、学校ではありえないくらい、肩が触れるほど近くにいて。
コンビニで買ったビターチョコをが口に入れ、その口の中で『ぱき』と小さな音がして。濃いチョコの匂いがして。
顔を上げて、目が合って。瞬間、視界が変わった。
「お勉強、しよっか。」 | 14.10.26
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