視線の先にわたしを置いて



彼の目は、いつもゴールリングを見つめている。

「毎日毎回、そんなに同じものばかり見てて飽きない?」
「それが人事を尽くすということなのだよ」

そう言って2・3度ボールをつくと、またゴールリングを見つめて、

「……ナイッシュー」
「当然だ」

ガコンッ、という鈍い音も立てず、ボールは綺麗にリングを潜り抜けた。

「毎日毎回、同じものばかり見ていて飽きないのか」
「うん?」

リングを潜り抜けたボールを目で追っていた私に、同じ質問が降ってきた。

「私が? 何を?」
「……フンッ」

視線を彼にやれば、彼の視線はまたゴールリングへ向けられて。

「毎日毎回、同じものばかり見ていたとしても、一つのものだとは限らないのだよ」
「えーっと、それは……ボールも見てる、ってこと?」

質問の答えがわからず、首を傾げながら答えると、呆れたような目で見つめられた。
……呆れた、目?

「毎日毎回、いや、それこそ『おはよう』から『おやすみ』まで見ていたいものだな」
「……寝起きの顔は勘弁してください」

そんな目で見るなんて、ズルい。

- end -

14.08.09