そっとそっと、真綿で包んでその上から両手で包むように。
そのくらい大切にしていたのよ。あなたのことを。
「玲央!」
そう私の名前を呼ぶあなたの笑顔を、私がどれだけ大切にしていたか分かる?
「好きよ」
そうあなたに告げる、この気持ちを表す言葉を私がどれだけ大切にしていたか分かる?
「れ、お?」
「全くもう……」
大切にしたいの。他の誰になんと言われても。
私はあなたが好きで。
あなたは私を好きで。
それなのに、
「ごめんなさいね」
「れお、」
それなのに、あなたが無邪気な顔で私の腕に抱き着くから。
その声で私の名前を呼んで、私の体に抱き着いてくるから。
「好きよ、あなたのことが」
「……」
手に感じる柔らかな髪が、僅かに怯えを宿し見上げる目が、浅く息を吐く小さな唇が、私を酷く掻き立てる。
大切なあなた。私の大好きなあなた。
ねぇ、あなたの事が大好きよ。大好きだから、大切なの。大事にしたいの。
「好き。大好きよ」
(でもそれを裏切るのも、私なの)
- end -
14.08.09