部活帰り、体育館にはまだ明かりがついていて。
そーっと覗いたら一人居残り練習中の笠松くん。
…と思ったら、黄瀬くん登場。
何か話して、笠松くんが怒鳴ってるのが聞こえる。
頑張れ先輩、お疲れ様。
すれ違った瞬間、いい匂いがした。洗剤とは違う匂い。
「いい匂いだね」と言うと顔をしかめて、ものすごく嫌そうに「…間違えただけだ」と一言。
森山くんのかな?黄瀬くんのかな?
「あ、」
小腹が空いてコンビニに来たら、ちょうどバスケ部集団が出てくるところだったので、思わず隠れた。
(遅くまでお疲れ様です)
背中にナムナムと手を合わせてたら笠松くんが振り向いて、目が合った。
(え、何?)
彼の動く口に合わせて声にしてみる。
『ハ・ヤ・ク・カ・エ・レ』
「おい」
「…」
「おい、」
「…」
返事がなくて振り向けば、難しい顔をしたままどこかを見てて。
(ったく)
仕事が忙しい、大変だと言ってた。頭の中はきっと、明日の仕事でいっぱいなだろう。
(無理すんじゃねーぞ)
そっと立ち上がりキッチンへ。
コーヒーでも飲んで、ちったー休め。
『宿題の範囲がわかりません』
「17P〜20P」
『数式が解けません』
「なんのための教科書か考えろ」
『明日も部活ですか?』
「当たり前だ」
『頑張ってください』
「おう」
14.06.08