ねぇ、話聞いてる?



「ねぇ、話聞いてる?」
「聞いてます」

そう答えても、貴女の頬は普段より丸みを増したまま。

「聞いてましたよ」
貴女に確認されるまでもなく、僕はいつだって貴女の話を、声を聞いているんです。
知ってました?

「……あのね、そんなにジッと見られてもね。言葉にしてくれなきゃ伝わらないんだよ?」

頬に蓄えていた息をゆっくり吐き出しながら、貴女は言う。

「なんか私ばっかり話してて、」

その先の言葉は、音にはならなかった。けど、僕には分かった。
貴女の唇が、微かに動いたその唇の形が、僕には分かったから。

「目は口程に物を言う、という言葉があります」
「……うん?」
「僕の言葉は、貴女に伝わっていませんでしたか?」

正直、卑怯だという自覚はある。あるけれど……、僕の日常は貴女ほど言葉に溢れていないから。

「話して下さい。僕は貴女の話を聞くのが好きなんです」
「……それ、ズルい」
「はい、僕はズルいんです」

貴女の目を見て、感情のままに僕が笑えば、貴女もつられて笑う。

「でも、たまには言葉にしてね?」
「……たまになら」

- end -

14.08.16