Log-01


【 緑間 】

そっと指先に触れてみた。
ピクリと僅かに動いただけで特に払われることはない。
だから彼の冷たい指先を手のひらで包んでみた。
「大事な手は冷やしちゃダメなのだよ」
「お前が暖めるから問題ないのだよ」
前を向いたまま視線はちっとも交わらないけど、それで良かった。
繋いだ手はこんなにも暖かいから。


【 宮地/酔 】

宮地先輩に優しくされたい。
そんな事を考えた私が悪かったのか。
いや、考えるくらい許されるはずだ。
じゃあ、目の前のコレはなに?
「可愛いなぁ。オマエ、こんな可愛かったか?ま、いいか」
目の縁を赤く染めた先輩が、私の髪をわしゃわしゃと撫でながら笑う。
先輩…酔うと別人なんですね…


【 高尾/酔 】

いつもと変わらないように見えて、実は足元が覚束ないのを私は見逃さなかった。
「大丈夫?」
「ん?何が?」
「実は相当酔ってるでしょ?」
「ははっ、バレた?」
バレるに決まってる。
だって誰よりも見てるから…なんて言えないけど。
「マジヤバそうだからさ」
「オマエんち、泊めてくれる?」


【 伊月/酔 】

「大丈夫?」
そう心配そうに覗き込む顔に笑って答えられない自分が情けない。
「無理しなくてもいいよ」
心配そうな色の中に僅かに混じる悲しさを感じて無理矢理顔を上げた。
「いや…大丈夫じゃない、けど大丈夫」
「なにそれ」
この目のお陰で、人混みの中から君が見つけられたから。
大丈夫。


【 日向/違 】

こっちを向いて、そう願えば「バーカ」と笑ってくれて。
一緒にいて、と言えば「ったく、仕方ねぇな」と手を繋いでくれた。
決して『好き』と想いを伝えたことはなかったけれど、それでも確かに伝わっていると思っていた。
「好きだよ」
「…は?」
顔を真っ赤にして驚く顔に、こっちが驚いた。


13.01.05