Log-02


【 小金井/違 】

いやだから、違うんだって!
そう言って必死に後ろ手に何かを隠そうとしているけれど、その『何か』はほぼ全体が丸見えである事に本人は気付いていない。
「丸見え」
「え?」
後ろに目をやり愕然とした顔で固まる。
「で、誰に渡せばいいの?」
手を出すと何故か私の手に花束が。
「…オマエに」


【 高尾/手 】

「はぁー」
小さな白い手に白い息を吐きかけてるのを横目で見ながらタイミングを測るなんて、本当オレってばダセェ。
「寒いね」
「そーだな」
こっち見上げて、鼻の頭赤くしてにっこり笑う。
その顔に胸の中だけじゃなく耳まで熱くなる。
「ん」
ポケットから出した手はきっと熱いから。
ほら。


【 緑間/正月 】

「あけおめ!ことよろ!」
「……」
目の前で眉間に皺を寄せる顔を見て、何故だか私は幸せを感じる。
なんて言ったら更に皺が深くなるから言わないけど。
「明けましておめでとうございます」
「最初からそう言えばいいのだよ」
「今年もこれからも、ずっとよろしくね」
「っ!?」
はぁ、幸せ。


【 緑間/壁 】

「ったく。どんだけ背ぇ高くても後輩は後輩なんだから少しは先輩に甘えなさい」
そう言って貴女は笑った。ふわり、と。
優しげに、幼子を見るように。
「先輩」
「ん?なぁに」
「先輩」
「なに?どうしたの?」
「せんぱい」
「はいはい」
繰り返し呼んでも、貴女はただ笑うだけ。
ただ、笑うだけ。


【 秀徳一年ズ 】

「せーんぱい!」
「どうした?高尾」
「いんや、姿見えたから声かけただけー」
「かわいいな、高尾よ」
「へへ、真ちゃんには敵わないっすよ」
「緑間?」
「ほら、あそこ」
目を向けると、物凄い勢いで違う方向を向いた後輩がいた。
「ぷっ!なにあのかわいい生き物」 「かわいいっすよね」
「かわいいね」


13.01.05