「ごめんなさい」
「なんで、スか」
「ごめん」
「なんでっ…!」
3年間ずっと見てきた。ずっとそばにいた。
気持ちは通じていると、オレと同じだと信じていた。
だから、笑って共に春を迎えようと。
この曖昧な関係に名前を付けて、新しく始めようと思ったのに。
「ごめん」
泣いたのは、誰?
窓の外を見るふりをして確認する。ああ、彼は今日も笑っている。
「また高尾?」
「本当に違うって」
友達の声に笑って返す。
(見てるだけでいいの)
私を見てほしいなんて思わない。…と言ったら嘘になるけど。
でも彼が笑っていたら、それだけで幸せ。
あ、目が合った。高尾が、笑った。
痛いイタイ。
下腹がキュウと絞られるような痛みに、ただ耐えなきゃいけない女の辛さ。
「そんなに痛ぇのかよ?」
蹲る私を見ながら青峰は言う。
(痛いに決まってんでしょ!)
普段なら言える言葉も今は出ない。
「ったく」
ため息と一緒に、熱に包まれた。
そんなんだと調子狂うだろうが。
背中からの熱に痛みが少し和らいだ。
「ありがとう、コガ」
「どーいたしまして!でも女の子って大変だよな」
一番痛む箇所に暖かい手が添えられて、その熱がじわり広がる。
「未来の為の痛みだからね」
「…オレとの未来のため、だよね?」
覗き込む目を見て笑う。
他の予定はありません。
「んなもん、溶かして固めるだけだろ?」
そう言ってチョコを刻む音は軽快で。
「湯煎で溶かしてぇ」
「型に流してぇ」
「後は固まるのを待つだけ」
気が付けば私は何もしていない。
「で」
「え?」
ピンクのエプロンにカチューシャを付けた男が笑う。
「チョコ、誰にやんの?」
口だけで笑う。
13.03.15