飲み会のお迎え。
『うちの涼太がいつもご迷惑をお掛けして』
「違うっス!」
『へ?』
「彼氏!」
『えっと、…何?』
酔っぱらいの意図は分からず聞き返すと、「だから!『私の彼氏が』て言うとこっス!」
駄々をこねる涼太の後ろで、涼太の先輩達が苦笑いしながらも、優しい顔で笑ってた。
私も、笑った。
「好きだよ」
確認するように、氷室は何度も私にそう言う。
『私も好きだよ』
そう返せば、氷室はなんとも言い難い顔で笑う。
嬉しそうに、幸せそうに。苦しそうに、信じきれないという顔で。
「スキダヨ」
…ねぇ、その言葉で誰の気持ちを確かめているの?
好きな人に「好き」と伝えることは難しい。
「好きだよ」
「ああ、うん」
自分は壊れたレコードみたいに「好きだ」「付き合って」を繰り返しては伝わらないと嘆くくせに。
「ねえ、好きだよ」
「うん」
「本当に好きだよ」
「ああ」
「好き」
「はいはい」
…そうか。私も壊れたレコードのように繰り返し過ぎた。
「好きっス!」
「ちょ、涼太!!」
オレのかわいい彼女は、オレが好きだと伝えるといつも顔を真っ赤にして怒る。
けど、その顔がかわいくて。
耳まで真っ赤にして、本当は照れてるって分かってるから。
(止められるわけないっス)
「好きっスよ」
赤く染まった耳に唇を寄せて囁けば、首まで真っ赤に染まる。
「ちゅーして」
「なっ!」
酔った彼女は手が付けられない。
そもそも相手がオレとはいえ男と一緒にいながらここまで酔うのは女性として
「ねーしんたろー。ちゅーして」
呂律の回らない言葉はいつもより幾分幼く、赤く色付いた唇とのギャップに眩暈がする。
「ねー」
…そこまで言うのなら、覚悟するのだよ。
13.05.09