Log-15


【 黄瀬 】

「今日の月はスーパームーンなんだって」
「あぁ、だからっスか」
部活帰り、掛かってきた電話に応えながら空を見上げる。
「明るいね」
「そうっスね」
「おっきいね」
「そうっスね」
「…会いたいね」
「そう、スね」
離れていても、同じ月を見てる。

だから、会いたい。一緒に見上げたい。


【 黄瀬 】

繋いだ手の指先が冷たい。話しかけても上の空。そしてここ暫く、目が合っていない。
(もうダメなんだな)
そもそも涼太が私なんかと付き合っている事自体が不自然だったんだ。
スルリと離された手。
(分かってたのに)
泣きたくないと俯いた視界に入ってきたのは、小さな箱。

「結婚、して欲しいんスけど」


【 緑間 】

「手、握ってもいい?」
私の言葉に眉を潜めた彼は、ズレてもいない眼鏡を押し上げた。
「あの」
「なんだ」
眼鏡の位置から降りてこない手を、ジッと見つめる。
本当は握りたいんじゃない。手を繋いで、並んで歩きたい。
何も言わない私の目の前に差し出された手。

「繋ぐなら、貸してやらなくもないのだよ」


【 黄瀬 】

「やっぱりおっきいね」
向かい合わせで手と手をくっつけて。当たり前の事なのに嬉しそうに笑うキミが可愛くて。
「ちっさいっスね」
そう言って合わせてた手をぎゅと握ったら、また笑うから。だから
「っ!」
「ごめん、だって可愛かったんスもん」
握った手を引いて強く抱きしめる。

あーもう、本当、好き。


【 高尾 】

「ほら」
差し出された手に、私はどう反応したらいいんだろう?
「あのさ、結構この状態恥ずかしいんだけど?」
「ごめ」
「悪いって思うんなら、さ」
高尾が私の手を引いて歩きだす。
「え?」
連れていかれた先は駐輪場。
「はい、乗って」
「うん?」
「しっかり掴まれよ」
「うん?」
「好きだ」
「う…うん?」


13.07.04