Log-18


【 緑間/誕生日 】

「今まで何をしていたのだよ」

日も落ち、暑さが落ち着いた頃に訪ねた彼はお怒り気味。

「だって七夕は夕方からでしょ?」

ずいっ、と笹を差し出せば驚いた顔。

顔に張り付いた短冊には『お誕生日おめでとう』

「…こういうことはちゃんと口で言うのだよ」

そう言って彼は私にキスをした。


【 緑間/七夕 】

からんころん、下駄を鳴らし歩く。

「晴れて良かったね」
「ああ」
「彦星と織姫も、今頃私達みたいにデートしてるかな?」
「…」
「本当、晴れて良かったね!」

見上げる空には、数年ぶりに見る天の川。

「明日も、」
「うん?」
「明日も、一緒に帰るのだよ」
「え、部活は」
「帰るのだよ」


【 黄瀬/別れ 】

「いきなり、なに言ってんスか」

つまらないことを聞いた、そんな風な顔をして髪をかき上げたけど、指が震えて。
だから、指を握りこんで。

「なに言ってんのか、オレにはさっぱり分からねっス」

声だけは。声だけでも、気付いてない振りで。

「別れたいとか、笑えないっスよ」

早く『冗談だ』と笑って。


【 赤司/涙 】

バチリ、音が聞こえたと思う間もなく背中に衝撃。

「いだだ!」

それは止まることなく、バチバチと背中にぶつかり続けて、流れていく。
首だけ振り返れば、視線の先には赤い髪。

「涼しくなったかい?」

青い空を背にして無邪気に笑う顔に、なぜか泣きたくなった。

そうやって笑っててよ。


【 宮地/汗 】

普段は「推しメンが」とか「轢くぞ」とかしか言わないくせに。

真剣な目、聞こえる声は体育館に低く大きく響く。
汗が蜂蜜色の髪を伝って、毛先に溜まって。

 ぱたり、 

(宮地のくせに…!)

顔が熱いのは、体育館の熱気のせい。夏の、せい。

聞こえた音は、

 恋に落ちる音がした。


13.08.17