『なにしてる?』
…変換しようとして、作りかけたメールを破棄する。
もう何回、同じことを繰り返した?
(昨日も、その前も)
夏休みに入ってから、毎日同じことの繰り返し。
『何してる?暇なら遊ばない?』
(…暇なわけないじゃん)
バスケ部のアイツに、暇な時間なんてあるわけ、ない。
アドレスを交換したのは、夏休みの前。
「あんまりくだらない事でメールしてこないでよ?」
そう言って笑った顔がチラつく。
(くだらない事、ねぇ)
『今度プール行かね?』
(…いやいや!初メールがプールって!)
「ないない」
破棄したつもりが保存になって。
(未練たらしい)
『宿題は終わったか』
自分の携帯に表示されている文字を見て、軽く頭痛がした。
こんな時、自称相棒のアイツなら自然な言葉を紡ぐことが出来るだろうか。
(長い、な)
生ぬるい風が肌を撫でる。
夏休み前日、「バイバイ」と挨拶をしたきり、声を聞いていない。
姿を見ていない。
「あー、今日も疲れた」
声に出しても、誰も応えてはくれない。
『お疲れ様』彼女の声は聞こえない。
携帯を見ても、メール受信を知らせる点滅はない。
夏休みは待ち遠しかった。
けど、始まってみたら思っていた以上に
「…キツいっスね」
思ってた以上に、キミが好きみたいっス。
『次の登校日は委員会があるから…』
送られてきたメールに返信を打つ。
『了解』
(それから、)
何か一言。さりげなく、なにか。
「…だぁっ!!」
結局いつもどおり、返信は二文字だけ。アイツからの返信は、もちろんない。
(そりゃそうだ)
オレに、落ち込む資格なんかねぇ。
13.08.17