Log-20


【 笠松/誕生日 】

(なんて言おう)

昨日からずっと考えてた。
最近やっと挨拶を返してくれるようになった彼の誕生日に、なんと声を掛ければいいんだろう?

(困らせたくない。けど。でもなぁ)

考えながら靴を履き替えていたら、隣に並ぶ気配。

(あ、)

「おめでとう」

驚いた顔。

から、崩れるように笑顔。


【 実渕/呼ぶ 】

「みぶっちゃん!」
「なぁに?」

見上げるほど高い背に笑顔で呼び掛ければ、愛想よく振り向く恋しい人。

「あのね、あのね」
「玲央」
「あら、征ちゃん。どうしたの?」

私と反対側から呼ばれた声に、あっさりと彼はそちらを向いてしまう。

「悪いわね」
「ううん」

行かないで、なんて。


【 緑間/ハグの日 】

「っ!?」

何が起きたのか分かっていない顔が見下ろす。

「今日はハグの日だって」
「なっ」

状況を把握したのか、首から一気に赤く染まる。

「だから」

背中から抱きつけばハグにはならないと分かっているけど、思い切り広い背中に抱きついた。

「こ、これではハグにならないのだよ」


【 紫原/半分 】

「アイス半分こしよう?」

そう言ったのに、何も聞こえてないように立ち去られたのが一昨年で。

去年も同じ事を言ったら、眉間にシワを寄せて渋々、小さい方を分けてくれた。

今年は

「はい」
「え?」
「アイス、半分こ」
「ありがとう!」

「一緒に食べた方がおいしいに決まってるしぃ」


【 火神 】

(手、つなぎたいな)

付き合ってもいないのに、急にそんなことされたら困るって分かってるけど、目が自然と手を追ってしまう。

「ん?手になんかついてるのか?」
「ううん」
「そういや」
「え?」
「オマエの手、ちっせーのな」

ペタリと合わせられた手のひらが、熱い。


13.10.06