Log-21


【 紫原 】

「…」口の中に広がる、甘いいちごみるく。

「それ、あげる。おいしいでしょ?」

そう言う彼の顔はすぐそばで、私と同じいちごみるくの匂いがする。

「あまい」
「その甘いのがおいしいんじゃん」

『いらないんなら、返してね』

いつまでたっても、いちごみるくの匂いが消えない。


【 黄瀬 】

意識してないから、悪気がないから、だから…

『髪、短い方が似合いそうッスね』

そう、私の髪の先を握って笑ったから。

『あ!髪、切ったんスか。もったいない』
「だって、黄瀬くんが!」
『オレが?』

髪を切った私を見て、同じ顔で笑うから。
何も知らない顔で、私を見るから。

…もう、言葉は出ない。


【 小金井/誕生日 】

いつか王子様が、なんて夢見た頃もありましたとも。だって、女の子だもん。

「どーした?」
「ううん、なんでもない」
「そっか」

そういって、彼は繋いだ手をブンブン振りながら歩く。王子様は、こんな事しない。
けど、

「慎二」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
「おぅ!」

その笑顔が好き。


【 小金井/誕生日 】

いつか王子様が、そう言って彼女は語る。自分の理想を。
オレとは違う、誰かの事を。

「ふーん、王子様かぁ」
「王子様は女の子の夢なの」

頬を赤くして言ってた彼女と、今は手を繋いで歩く。

なぁ、オマエの王子様って

「王子様は女の子の夢」
「…」
「でも、慎二は私だけの人。でしょ?」


【 小金井/誕生日 】

例えば目が合うと笑ってくれるとか。

「おはよう」て挨拶してくれるとか。

移動教室の時にする短い会話とか。
隣に並ぶと背が高いこと、勉強が出来ること、面倒見がいいこと。
知れば知るほど好きになって。

「お誕生日おめでとう」
「ありがと」
「あと」
「ん?」

キミの全てが

「好きです」


13.10.06