「試してみる?」
そう言って、彼は私に手を差し出した。
「え?」
差し出された手と彼の顔を交互に見ると、楽しそうな声で続けて言った。
「オレと、楽しい学園恋愛を試してみないか?」
「…え?」
夕日の差す放課後の教室に二人きり、
差し出された手は、小さく震えていた。
こけた。それはもう盛大に。
「なんで、なんもねーところでコケるんだよ」
「…」
そんなの私が知りたい。
好きな人の目の前で、小さな子供みたいにこけたまま、私は立ち上がれない。
「ま、そんなところも好きだよ」
「!」
「な、なんだよ!好きじゃ悪ぃのかよ!」
「ううん!」
「ったく、ほら」
難しい顔をした彼が、両手を広げて私を呼ぶ。
「え?」
「日曜だからな」
「うん…?」
日曜だから、なんだと言うのだろう?
そんな思いが顔に出てたのか、彼の眉間のシワが更に深くなる。
「充電、いらねーのかよ」
「!!」
理解するより早く、広い胸に飛び込んだ。
「ふぁ…」
頭上から大きなアクビが聞こえて見上げる。
「眠いの?」
「うん」
「でも、寝てたよね?」
「…うん」
返事の間が気になってジッと見つめる。
「…だって」
そろそろ首が痛くなって来た時、ポツリと落ちてきた言葉。
「だって、オレが寝返りしたらちん、潰しちゃうし」
「ずっと好きでした」
そう、好きなヤツから告白された。
「聞いてくれてありがとう」
そう、吹っ切れたように笑う。
「これでやっと、次に進める…」
「『次』ってなんだよ」
「え、」
「オマエに『次』なんてねぇよ」
「勝手に過去形にすんな、轢くぞ」
頼むから、次なんて言うな。
14.01.31