負けないくらい想ってたのに



誰にも負けないくらい、キミが好きでした。

でも、キミが選んだのはオレじゃない、別の男でした。

でも、それを悲しんだりしない。不幸だと嘆いたりしない。その男から奪ってしまえ、なんて思わない。

なんでかって? そりゃあ、

「笑ってるからだろ」
「……そうか」



部活帰り、オレらとは反対側の歩道を歩く姿を見つけた。隣に立つ彼氏に向ける笑顔は、今まで見たことのない顔で。

息が一瞬詰まったけれど、隠せたつもりだった。

でも、足が動かなかった。止まったまま、浅く呼吸を繰り返す姿は、やっぱり気づかれて。

「どうかしたのか?」
「いーや、なんでも……」

いつもみたいに笑ってかわすはずだった。

「あれは、か」
「……」

普段、こういうことには鈍いくせに。なんでこんな時だけコイツは気が付くのか。

「そんな顔をするくらいなら、さっさと告げればいいのだよ。骨は拾ってやる」
「わお! 真ちゃんってばやっさしー」
「高尾」

自分が今、どんな顔をしているかなんて知りたくもない。
けど、相当ひでー顔をしていることは確かだ。
緑間が、こんなことを言うくらいには。

「だってさ、オレが告ったら、ぜってー断るじゃん? 誰がどう見たって、彼氏大好きだし。そんなにさ、オレが告ったら絶対悲しむっしょ。悲しい顔、させたいわけじゃねーし」

誰にも負けないくらい、キミが好きでした。

「笑っててほしいんだわ。にはさ」
「……そうか」

でも、オレが勝てないくらい、キミは別の男のことが好きでした。

「好きなヤツが笑ってるって、幸せじゃね?」
「……そうだな」

だから、どうか幸せに。

- end -

13.03.31