誰よりも好き、そんな気持ちを教えてくれたのはアナタでした。
人より勝っているところなんて殆どない、存在そのものが影のような僕に手を伸ばしてくれた人。
「黒子くん」
そう僕の名前を呼んで笑う顔が眩しくて、僕はいつもまっすぐにアナタを見ることが出来ませんでした。
何度か繋いだ手は、小柄な僕よりもっと小さくて。柔らかくて。
今まで本の中でしか見たこのない、『強く握ったら壊れてしまいそう』という表現がまさにぴったりで。
僕みたいな人間がアナタを傷つけてしまうんじゃないかと思ったら、とても怖くて触れることが出来ませんでした。
「黒子くん」
それでも、アナタはいつも僕に笑いかけてくれた。
僕を見つけてくれた。
「手をつなぐのが駄目なら、これは? これも……駄目、かな?」
臆病な僕の小指に絡んだ、アナタの細い小指。
小指同士なら、傷つけることも壊してしまうこともない。そう思った僕は、小さく頷くだけの返事を返す。
「よかったぁ……」
ふわり、花が開くように、心配そうだった顔が笑顔に変わる。
その顔を見るだけで、まるでバスケの試合にフルで出てたように息が苦しくなる。
好きで、好きで、好きで、その気持ちが溢れそうで。苦しくなる。
だから、僕は決めた。
誰よりも好きだから。誰よりも幸せになってほしい人だから。
だから、僕の隣では駄目なんです。
僕は影で、アナタは光の中で笑うのがよく似合うから。
『黒子くん』
あの日繋いだ小指に、目を閉じてそっと唇を寄せれば彼女の声が聞こえる気がした。
「大好きですよ、さん」
- end -
13.03.26