小ネタ04


夏休み中に誕生日を迎えるお嬢さんへ。


『え、緑間君?』

機械を通して聞く声は初めてで、それだけで声が詰まった。

「…起きていると思ったのだよ」

そう、この時期は必ず深夜まで起きていることを知っていた。

『あはは、お見通しですか……』

久々に聞く声は新鮮で、なかなか次の言葉が浮かばない。

夏も終わりが近づく夜、虫の声だけが響く。

『あの、本当にどうしたの? こんな時間に電話なんてしないタイプだよね?』
「ああ、普段なら寝ている時間だな」
『ふふっ、おは朝に備えて?』
「おは朝はオープニングから見るのだよ」
『え、オープニングからって……え、ちょ、毎日何時に起きてるの?』

互いに声を潜め、ぎこちなく会話を続ける。

『でも、まさか緑間君からこんな時間に電話くるなんて思わなかったから、ビックリしたよ』
「ふん」
『あ、なんとなく話してたけど、本当に何も用ないの?』
「用ならば、」

思わず零れそうになった言葉を飲み込む。

『ならば?』
「…………」
『もしもーし、緑間くーん』

時計の秒針を見ながら、深く息を吐く。

「誕生日おめでとう」
『…………』

携帯の向こうで、息をのむ音が聞こえた。

『あの、さ』
「なんだ」
『せっかくお祝いしてくれるなら、プレゼントリクエストしてもいいかな?』
「……構わん。言ってみろ」



『緑間君の宿題を写させて下さいっ!!!』

- end -

13.10.06