『え、緑間君?』
機械を通して聞く声は初めてで、それだけで声が詰まった。
「…起きていると思ったのだよ」
そう、この時期は必ず深夜まで起きていることを知っていた。
『あはは、お見通しですか……』
久々に聞く声は新鮮で、なかなか次の言葉が浮かばない。
夏も終わりが近づく夜、虫の声だけが響く。
『あの、本当にどうしたの? こんな時間に電話なんてしないタイプだよね?』
「ああ、普段なら寝ている時間だな」
『ふふっ、おは朝に備えて?』
「おは朝はオープニングから見るのだよ」
『え、オープニングからって……え、ちょ、毎日何時に起きてるの?』
互いに声を潜め、ぎこちなく会話を続ける。
『でも、まさか緑間君からこんな時間に電話くるなんて思わなかったから、ビックリしたよ』
「ふん」
『あ、なんとなく話してたけど、本当に何も用ないの?』
「用ならば、」
思わず零れそうになった言葉を飲み込む。
『ならば?』
「…………」
『もしもーし、緑間くーん』
時計の秒針を見ながら、深く息を吐く。
「誕生日おめでとう」
『…………』
携帯の向こうで、息をのむ音が聞こえた。
『あの、さ』
「なんだ」
『せっかくお祝いしてくれるなら、プレゼントリクエストしてもいいかな?』
「……構わん。言ってみろ」
『緑間君の宿題を写させて下さいっ!!!』
- end -
13.10.06