七夕も過ぎた夜。
たまたま立ち寄ったコンビニにアイツがいた。
(ったく、女子がこんな時間に…)
「よっ!」
「うわっ!!」
声を掛ける前に軽く息を吐いて、教室にいるのと変わらない感じで肩を叩けば、ビクリと跳ねた勢いで籠の中のスイーツが揺れた。
「て、高尾かぁ」
「驚いた? つか、オマエ。それこの時間から食ったら太」
「いーの! 今日はいいの!」
若干、食いぎみに言葉を被せてきたのを不思議に思って見ていたら、
「今日は誕生日だから、いーの」
ぽつりと言われた言葉が、一瞬理解できなかった。
(は? え、誕生日って、)
「じゃ、また明日」
ボケっとしてるうちに、アイツは選んだ品を満足げに眺めてレジに並ぼうとした。
「いやいやいや、ちょっと待てって!!」
「え、なに?」
(誕生日って聞いて、『はいそーですか』で終わらせられるはずないでしょ!?)
キョトンとオレを見る姿は、普段見慣れた制服とは違って。
「奢る」
「奢る、て…いやいや、ダメでしょ! いーよそんな」
「奢る!」
「いやだから」
「誕生日なんだろ? このくらいさせろよ」
「……ありがとう」
はにかむように笑う顔を見て、速効スケジュール登録しようと決めた。
(来年は覚えてろよ!!)
- end -
14.07.26