どこにでもあふれている02



なんとなく、ただなんとなく感じる違和感ってヤツは、誰にでもあると思うわけよ。
特にオレの場合は視野が広いから、その違和感ってのは結構あるんだけど。それでも、その視野の広さとこのコミュニケーション能力で、大概の違和感の原因は分かっちまう。
けど、なんでだろうな。な〜んでこの違和感は消えないんだろう?


例えば。ふとした瞬間、視線を感じたはずなのに振り返っても誰もいない。もちろん、上を見ても誰もいるはずもない。
例えば。誰かに何かを伝えたいと思っても、それが『誰』になのか分からない。伝えたいこと? さぁ、なんだろうな。
例えば、例えば、……上げたらキリがないようで、だけど、上げるほどの『例えば』もないようで。


「はぁ」
「……」
「なぁ、そこは『珍しいのだよ、オマエが溜息をつくなど』とか突っ込んでもいいんだぜ?」
「その必要性は感じられんのだよ」
「……そうかよ」
取り付く島もない、とはまさにこのことだろう。緑間は読んでいる本から顔を上げることもなく、オレを切り捨てる。
別にダチは緑間だけじゃねーけど、こういうお話はなんとなく他のヤツとはしずらい……とか思うってことは、やっぱりオレは緑間のこと信頼してるんだろう。なんてったって、変人の相棒だからな!
「他の事を考えていれば、解決などしようもないのだよ」
「なにオマエ、エスパー?」
「フン、オマエが分かりやすいだけだ」
相変わらず緑間の目は本の文字を追ったままだというのに、そんな事を言うから。オレはちょっとだけ嬉しく思いながら、悔しく思う。これではオレの『鷹の目』がお役御免になっちまうじゃねーか!!
「……見えるものしか見ていないから、そういう事になるのだよ」
「はぁ?」
ようやくオレの方を見たかと思えば、謎の言葉を残して緑間は席を立つ。その後姿をなんとなく目で追っていくと、教室の入り口に別クラスのマネージャー、が立っていた。
「あ、ごめん緑間。コレお願い出来る?」
「構わん」
「ありがとう」
ほんの二・三言、時間にしてものの数秒だけ話して、は去った。確かに、緑間は背が高いから、目の前に立たれたら視界一杯になるけれど。それでも、このクラスにはオレもいるのに、チラリとも教室の中見ないで立ち去るってどういうこと?
(ていうか、緑間もが来たこと知ってたのか? クラスのヤツがオレらに声掛けなかったのに? が呼んだ風でもねーし……)
このモヤモヤは、最近の違和感と似ていた。どんなに目を凝らしても、理由が、原因が見つからない。
(別にに無視されてるってわけでもないんだよな。部活の時とか普通にドリンク配ってんし。さっきみたいに教室来た時だって、オレがプリントとか連絡受け取ることもある。けど、なんか……)
「なーんかスッキリしねぇ」
机に突っ伏して、目を閉じれば視界は真っ暗。なにも見えない。

『見えるものしか見ていないから、そういう事になるのだよ』

(うるせーよ)

オレの頭の中にまで出てくるなんて、本当、なんて頼もしくてお優しいエース様だろうな!!

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14.07.26